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【テレパイベントレポート21】「自分が今までやったことのない特殊なビジュアルになりました」――イラストレーター・TERUさん初個展「GOOD FOR HEALTH」

今回、訪れたのは原宿アニコリミックスギャラリーにて7月8日〜19日で開催されている、イラストレーター・TERUさん(@teru_by_m)による初個展「GOOD FOR HEALTH」。



自身初の個展では全26作品を展示。テーマとして掲げている『強化骨格』を中心に、アナログとデジタルのあり方について深く考え導き出したという作品の数々にはメッセージ性が多く含まれていました。


それでは実際にTERUさんとのお話を交えて本展示会をご紹介していきます!




■展示風景


――本展『GOOD FOR HEALTH』のコンセプトをお聞かせください。


「本展のコンセプトは「デジタルとアナログの融合」です。僕は基本的にはデジタルの作家なのですが、アナログとの隔たりを感じることがあり…だけどデジタルもアナログも同じ絵を描く画材というものだと思うんです。そこで一度このふたつの枠を外して融合させてみることに挑戦しました」



「左はファンタスという紙に印刷しました。右はエナメルペイントをしたものにUVプリントしています。ちなみエナメル塗料で自分でキャンバスを塗りつぶしています」


――左の方が光沢がありますね。


「そうですね、質感や色が結構違います。デジタルを画材と捉えたときの出力の仕方としてUVプリントを選んでいて、アナログに関してはエナメルペイントであったり後ほど紹介するサビ加工であったり、日本画の手法であったりで。これらのデジタルの手法とアナログの手法を掛け合わせています」



「また、実体化したくて立体も作りました。初個展を開催するにあたって、もちろん絵だけでも十分に魅力を伝えたいとは思ったのですが、立体があることによってより自分の伝えたい『強化骨格』というものをよりリアルに伝わるんじゃないかなと思いご用意しました」


――全作品のタイトルにある「ES_P_〜」とはどういった意味なのでしょうか?


「ESというのはEnhanced Skeletonを略した頭文字で、PはPrototypeの頭文字から。まだ完成品じゃないっていう意味があります」



――こちらは先ほどお話しされていたサビ加工の作品ですね。


「そうです。鉄の塗料を塗って酸化させる薬品を使用し実際に錆びさせています。工業製品という『強化骨格』の側面を見せたかったんです。強化骨格という存在を、個性を持った人間として最終的には振る舞うのですが、「あくまでも工業製品だぞ」と。そこで金属の代表というイメージの鉄(アナログ)と強化骨格を組み合わせました」



「鉄・錆と言っても古びているということではなくて、錆の中でも強化骨格自体は朽ちずにしっかり残っているのを表現しています」



「こちらは個展のために描き下ろしたメインビジュアルのラフスケッチです。『ウルトラマン』のような特撮っぽい雰囲気や巨人をイメージしました。奥からぐっと迫り出してくるような構造にしました」



「そしてこちらが先ほどのラフの完成版。ベースが日本画で岩絵具で作ったテクスチャーの上にUVプリントを施し、いわゆる1つの画材という感覚で乗せれるようになりました。普通のプリントのインクだと(日本画の上に)色が乗らないんですよね……。失敗したところは、またアナログの手法でニスで固めて硬化させたところをヤスリで削り、そこにシーラーを塗り、さらに水性ペンキを塗り、もう一度プリントし直していたりして…」



――この作品だけでも制作に相当な時間を費やしているんですね。


「特に黒の作品に関してはめちゃめちゃ時間がかかりました。ニスを塗った時にヒビが入ってしまったりもしてリカバリーが大変だったんですけど…印刷会社さんと試行錯誤して完成させました。黒がなぜうまく馴染まなかったかというと、日本画の良さを出すために画材をあえて定着させなかったんです。1番雰囲気がある作品なのですがインクが乗りづらかった。この作品が1番デジタルとアナログが融合していると思います。工程を重ねた故の凹凸もあり、自分が今までやったことのない特殊なビジュアルになりました」



――この作品はまた違った雰囲気ですね。


「こちらはC(シアン)・M(マゼンタ)・Y(イエロー)・K(キープレイト)がテーマになっています。フリーペーパーを作った時の、刷版です。よく見るとフリーペーパーの跡があります。版というものは大量生産するために使用するものなのにその存在オンリーワンです。僕がテーマにしているものの中には『攻殻機動隊』の世界観があり…、主人公・草薙素子の身体は量産的なアンドロイド、中身は彼女自身のオリジナルという“義体”に惹かれました。そして刷版の「大量生産の大元にある1つしかないもの」というのは僕の義体に対するイメージと近く、創作テーマ『強化骨格』と組み合わせることにしたんです」


――なるほど。刷版に義体を重ねていたのですね!



どのスポットを切り取ってもTERUさんの掲げた「デジタル×アナログ」の世界観を楽しむことができました。会場内のテレビ画面ではアニメーションが流れていたり、2mほどある強化骨格の作品もあったりとその至るところにTERUさんの初個展へ向けたこだわりを感じること間違いなしです。


――それでは最後にご来場者様へメッセージをお願いいたします!


「僕が頭の中で想像している“カッコイイ”というものに共感していただけると嬉しいです。僕もさまざまな作家さんの影響を受けて作風が磨かれてきた部分があるので、その影響された作家さんに(僕が)出会った時の感動と同じような感情を僕の作品を見て感じてくれたらいいなと思います。ぜひ近くに立ち寄った際はよろしくお願いいたします」


 

■ライタープロフィール

ニックネーム:sasamoto chihiro

出身地:日本・東京都

ツイッター:@tiam_00

自己紹介:2021年に日本大学芸術学部文芸学科を卒業後フリーでライターをしております。


アニメ文化とアンティーク雑貨と絵を見ることが好きで、物語だと西洋ファンタジーやバトル系、耽美さを含んでいるものが好き。おすすめされたらオールジャンルなんでも見ます。


現在は「アニメイトタイムズ」「クウネル・サロン(マガジンハウス社)」「リアルサウンド」などで活動中。

 

ホビーテレパ運営会社の株式会社ジニヤズでは、若手クリエーターたちの作品や発想、活動をインタビューを通して世界中の多くの人々に伝えることを応援しております。


多言語(日中英)翻訳と情報発信のサポート、ビジネスチャンスのクロージング斡旋も行っております。インタビューや業務提携などのご希望がある方は、お気軽に「お問い合わせ」までご連絡くださいませ。

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