唐突なんですが、OVA版の『戦闘妖精雪風』とか、『エースコンバット3』とか、なんとなく90年代末〜2000年代前半あたりの架空戦闘機に共通するテイストってあると思うんですよね。そんなテイストを感じさせるプラモデルが、いきなり中国からやってきました。その名も『南天門計画 玄女Ⅲ宇宙無人戦闘機』シリーズ。名前が長いですね。
『玄女Ⅲ』というのが機体名のよう。こちらの赤い機体は「エース専用機」なんだそうです
こちらの白い機体は「隊長機バージョン」とのこと。無人機なのに隊長機とかエース機とかがあるんですね
この『玄女Ⅲ』は、「南天門計画」というコンテンツに登場する無人戦闘機だそう。「南天門計画」というのがちょっとややこしくて、無理やり説明すると「2030年代に開始された人類と地球外生命体との戦闘に際して、航空機メーカーが提示した世界規模の軍事力整備計画」といったもののようです。アニメやコミックなどではなく実際の航空機メーカーが発表しているコンテンツなんだそうで、各種の航空ショーや航空機関係の展示会でもモックアップなどが展示されているとか。日本で無理やり例えるなら、三菱や川崎重工が「未来の宇宙人との戦闘ではこういうカッコいい飛行機が活躍します」とプレゼンしているようなものでしょうか。で、それが実際にプラモデルになっちゃったわけで、「とりあえずなんでも立体物にして売っちゃえ」という勢いを感じますね。
で、それをキット化したのがHobbyMio。元々模型用ツールのメーカーでしたが、最近はオリジナルのキット製造も行っているメーカーです。どんなキットになっているのか、中を見てみましょう。
初回限定版なのでソリッドカラーのパーツとクリアパーツが両方入ってます。表面は軽い梨地で仕上げられていて、しっとりとマットな質感です
こちらは「隊長機」のパーツ。純白ではなく、落ち着いたアイボリーのような色合い
外装以外のパーツはグレー系で成形されているので、塗装しなくてもざっくり色分けが再現されます
デカールとシールが両方入っているので、好みやスキルに合わせて仕上げを選ぶことができます。至れり尽くせり!
今回ご紹介するのは、ソリッドカラーのパーツに加えて初回特典のクリアー外装パーツもついているキット。倍のパーツが入っているので一瞬混乱しますが、使うのはどちらか片方だけです。パーツのモールドは戦闘機のプラモデルだと思うとちょっと太めですが、架空のSFメカのキットだと思えば充分精密でシャッキリしています。エンジンやコクピットといったメカっぽい部分と機体外板が色分けされているのも、飛行機キットとしてはちょっと異色。どちらかといえばキャラクターもののキットっぽい手触りです。
コクピット(?)の部分は完成後も開閉可能な仕組みになっています
裏から見るとこんな感じ。黄緑色のパーツを裏から嵌め込んで色分けを再現しています
胴体から斜めに生えている主翼は、角度のついた桁パーツを挟み込んで固定。角度にずれや歪みが発生しないようになっています
胴体後部のエンジンナセルの内部。インテークと排気ノズルの部品を積み上げるように取り付けていきます
機体は大きく胴体上下面とエンジンナセルの3つに分割された構造。さほど複雑な作りではないので、多少プラモデル作りに慣れている人ならすぐ完成させられます
組み立ては接着剤を使わないスナップフィット。一部には接着しちゃった方がいいような部分もありますが、基本的には接着剤無しでスルスル組めます。主翼は胴体に対して微妙な角度でくっついているのですが、この角度をきっちり出すための桁パーツが入っていたりして、「複雑な形状の機体をいかにトラブルなく組み立てさせるか」にはきっちり配慮した印象があります。ガンプラの組み立てに慣れているくらいのスキルがあれば、さほど手間取らずに組み立てられるのではないでしょうか。
完成! う〜ん、いかにも架空機といった雰囲気
スタンドも付いているのでこのまま展示できますが、着陸脚のパーツはないので飛びっぱなしです
前から見ると主翼などがX字型に配置されていることがわかりますね
こちらは「隊長機」の方。色以外は「エース機」と同じです
これがいきなりプラモデルで成立してしまうの、結構すごいことな気がする
完成するとこんな感じ。正面から見るとX字型になっている翼の配置や、ブーメランのような前進翼、クリアパーツが埋め込まれている謎の穴など、かなり特異な機体形状であることがわかります。これを「未来の無人戦闘機です」と大真面目(?)にメーカーがプレゼンしてるんだから恐れ入る。というか、やっぱり90年代末〜2000年代前半のゲームやアニメに出てきた架空戦闘機っぽさを強く感じます。
排気ノズル周辺は別パーツになっているので、先に塗ってから取り付けるのもアリ
レールガンっぽい兵装。説明書には色々説明があるのですが、全部中国語なのでよくわからず……
コクピット(?)の部分は開いて、中のメカを引き出すことができます
畳んだ状態の主翼パーツが付属。これが付いているなら着陸脚もほしかった……!
ディテールについても、キャラクターモデルと架空戦闘機のスケールモデルっぽさをいい塩梅でミックスした感じがあります。主翼の折りたたみ機構をパーツ単位の差し替えで再現しているのは、いい意味でキャラクターモデルっぽいところ。コクピットに当たる部分が開いて中のメカを引き出せるようになっているのも、見るからに「この飛行機は無人機です!」という感じで不気味カッコいいですね。反面、別部品になっているエンジンの排気口まわりは、塗装で焼けた金属の質感とかを盛り込んでやりたくなる雰囲気。嘘っぽさと実在の飛行機らしいディテールが、バランスよくブレンドされていて面白いです。そして、こんなネタがいきなりインジェクションプラスチックキットとして発売されるところが、中国のホビーシーンの興味深いところだと思います。
たくさん買って並べよう!
というわけで、『玄女Ⅲ』でした! 複雑な機体形状を過不足なく分割し、スムーズに組み立てられるようにチューニングする手際は危なげがなく、HobbyMioの地力の高さを感じさせるものでした。クリアカラーとソリッドカラーを選べるというのもなかなか太っ腹で、サービス精神も充分。なにより「20年ちょっと前のあのころ」を思い出させるような、ちょっと懐かしいテイストの架空戦闘機のキットとして、けっこう貴重な存在だと思います。
付属のデカールを使ってもよし、オリジナルの塗装パターンで仕上げてもよし、というこの『玄女Ⅲ』ですが、さらに初回限定版としてなんと「あらかじめ外装パーツが塗装されたバージョン」もあるとのこと。次回は、そちらのキットの中身を覗いてみようと思います。
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■ライタープロフィール
ニックネーム:しげる出身地:日本・岐阜県自己紹介:フリーライター。ホビー誌などでいろいろな原稿を書く傍ら、毎月けっこうな量のオモチャを買って遊びながら暮らしています
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