ボコボコとロボット玩具が現れては消えていく中国トイ業界ですが、久しぶりに「こ、これは傑作では!?」と思えるようなアイテムにぶつかりました。それが大火鳥文化の「ゴールデン・クロウ」です。
このロボット、気鋭のメカデザイナー/アーティストであるLAS91214氏が連載するSFコミック『BIRD/BINARY』に登場するもの。この作品の前日譚である『FROZE/BLADE利剣寒封 -THE ORIGIN OF AWT-』 は、ここホビーテレパでも連載されています。LASさん、メカもデザインできて3Dモデルいじれて漫画も描けるんだからすげ〜よな。
こちらがゴールデン・クロウの箱。表面に梨地っぽい加工がされていて高級感があります
中身はブリスター入り。付属品が入ったブリスターは2つに分かれています
で、早速本題のゴールデン・クロウなんですが、なにやら箱にはミニ四駆っぽいというか、『ジャスティス・リーグ』あたりの頃のバットモービルっぽいクルマのイラストがドカンと印刷されています。しかし中身を出してみるとなにやらロボットが。このイマドキな見た目のロボットが変形すんの? マジか。
パイロットのフィギュアが4種類も付いているのがけっこう珍しい
箱の中身はこんな感じ。ゴールデン・クロウ本体に加えて、銃型の武器が3種類(うち2種類は2丁ずつ付属)、剣型の武器が1本、交換用の手首が6つとパイロットのフィギュアが4種類も付いています。さらに、「GOLDEN CROW」とロゴの入ったカードと取説も付属。このカード、単なる厚紙とかではなくクレジットカードみたいな材質のプラスチック製のもので、妙にかっちりしたものでした。
組み立て箇所などは特になく、武器をくっつけたらできあがりです
タイヤが4個くっついているので、クルマになるんだろうな〜ということはわかる
前後に長い肩の装甲がイカす
箱から出して背中に武器を搭載すれば、これでひとまず完成。鋭角的なフォルムや外装の重なり合い具合は文句なしのカッコよさで、「イマドキのロボット〜!」という感じです。随所に入っているオレンジの差し色もイケてる。とりあえず4つタイヤが見えているので「クルマに変形するんだろうなあ」というのはわかりますが、しかしそこ以外で自動車っぽい雰囲気のあるパーツはほぼ見当たりません。
このゴールデン・クロウ、関節部分や手足のフレームなど随所に金属パーツが使われており、ズッシリした重みがあるのもベリーグッド。やっぱりオモチャはある程度重くないと、「これはいいものだ」という感じが薄くなるんですよね。この世の全てのオモチャは、持ってると手が疲れる寸前くらいの重量があっていいと思います。
武器は背中の携行用マウントで取り付けます
剣は関節のついたアームで背中に取り付けられます
肩を持ち上げると、脇の下にあるシリンダー状の部品も連動して可動! 芸が細かい!
膝は二重関節だし、爪先も動きます。脚のフレームは全体が金属でできているので超頑丈
肘関節は軸一本で動きますが、関節の位置がかなり前の方にあるので深く曲げることができます
足首はほぼ真横まで倒すことが可能。相当無理のあるポーズでも接地します
フィギュアと絡ませても楽しい!
コクピットハッチも開閉できます。すごいな〜
細かいところに詰め込まれた工夫も、なかなか目を惹くものがあります。特に可動に関しては超優秀。外装がゴテゴテしているのでそんなに動かなさそうに見えますが、肘も膝もグッと深くまで曲がるし爪先も動くし足首は真横近くまで倒れるしで、パッと見の印象よりずっとよく動きます。また、脇の下のシリンダーが肩の動きに追従してグッと動いたのを見た時は、思わず「おお〜」と声が漏れました。
そして、とてもよかったのが関節の渋み。前述のように金属のフレームが入っているので、このサイズのロボットトイにしては本体がけっこう重ためなんですが、全身の関節に絶妙な渋みがつけられているのでポーズをつけてもヘタりません。かといって渋すぎることもなく、動かしたい部分を動かしたいだけ動かせて、手を離せばピタッと止まるという理想的な渋さ。ここはけっこうこだわって調整したんじゃないかな……と思わせるものがあります。写真では伝わりにくいのがもったいない!
さらにコクピットハッチまで開くんだから大したものです。ゴールデン・クロウは大体全高14㎝ほどの大きさで、ロボットトイとしてはちょっとだけ小ぶりな大きさなんですが、そのサイズで胴体内部に人形を乗せるだけの空間が作れるんだからすごい。さすがにコクピットのディテールなどは入っていませんでしたが、着座姿勢のフィギュアを乗せて雰囲気を楽しむことはできます。
武器を持たせてもカッコいいぞ!
武器持ち手は親指とその他の指がくっついているタイプというか、形状的には「グーに穴が開いているだけ」という物なので、武器もしっかり保持できます。手から武器がポロポロ落ちると超イライラしますが、そういうトラブルはありません
手首が前後にスイングするので、グリップの角度が傾いている武器でもシャキッと構えられます
剣の両手持ちもできる。マジか〜!
膝立ちも余裕。ガチャガチャした外見からは想像できない稼働範囲の広さです
脚一本につき4つも可動部が設けられた股関節を見よ!
取説に「ここはこのくらいの角度まで動くよ!(それ以上いったら壊れるよ」という説明があるのもありがたい
前述のようによく動くアイテムなので、武器を持たせてポーズをつけても大変エキサイティング。変形機構を使えば胴体を前傾させることもできるし、手首が上下にスイングするので、銃を持ったポーズがバッチリ決まります。剣を両手で構えるようなポーズも余裕。
これだけ広い可動範囲を実現している秘密が、三次元的に細かく関節が配置されている点。上の股関節を見るとわかりますが、脚の付け根だけで4ヶ所に回転軸が設けられているのがわかりますでしょうか。3軸くらいまでならフィギュアでもよくありますが、変形機構を兼ねている4つめの軸によって、より複雑な表情をつけることが可能になっております。よくできてるな〜
しかし、単によく動くロボットというだけではないのがゴールデン・クロウのすごいところ。ここからクルマに変形します。でも、どうやって……?
書いてあるのは中国語だけど、写真を見ながらだったら楽勝で変形させられました
では、ロボットモードから手首を外してトランスフォーム開始!
腰の装甲のジョイントを外して前方に移動させて……
腕を折り曲げて肩に収納したり、脚の関節を固定したり……
タイヤの位置を調節して足首を横に倒したら……
両足を閉じて完成! 単純なプロセスだけどちゃんとクルマになってすごい!
意外に簡単な変形プロセスで、ロボットからクルマに変形しました。手足を変形させてタイヤを接地させられる形にするのはなんとなく予想できたんですが、アームを使って背中側のパーツを胴体前面に持ってくる工程は「オッ」と思わせるものがあります。さらに、各部がジョイントでしっかり固定される構造で、変形前後でグラついたりする部分がないのも好印象。タイヤは回転するので、転がして走行させることもできます。
ミニ四駆っぽい。キャノピーっぽいオレンジのクリアパーツとマーキングが効いてますね
後ろから見ても破綻なし! 超カッコいい
外装の移動のさせ方や形状がうまいので、胴体側面もあんまり「脚が剥き出し」という感じはしないです
裏面から見ると、かなりミチミチに部品が詰まっていることがわかります
フィギュアと組み合わせても捗る〜
平らなところが多くて座らせやすいのもありがたい
どの角度から見ても破綻がない、素晴らしいビークルモード。前述のようにミニ四駆とバットモービルを足して割ったようなデザインですが、ガワ変形的な部分が特にないにも関わらず人型からここまでフォルムがガラリと変わるのは、まさに変形トイの醍醐味です。ロボット形態同様、付属のフィギュアを組み合わせて遊んでも大変楽しい。平面が多い分、フィギュアを乗っけて遊びやすいのもありがたいです。
超いいオモチャ! マジでオススメです!
ということで、ゴールデン・クロウでした! いや〜、触ってみてビックリしたんですが、これは近年のロボットトイの中でもトップクラスの出来だと思います。変形するという点もさることながら、まず「ロボットのオモチャ」として基礎的な部分がとてもちゃんとしている。動いてほしい部分がちゃんと動き、関節はきっちりと渋みがあり、金属パーツを多用することで剛性と手に取った時の満足感を作り出しています。普通それくらいできるでしょ、と思われるかもしれませんが、価格を考えるとかなり驚異的なクオリティだと思います。地力がある感じと言いますか、「こういうオモチャがほしい」「ロボットのオモチャはこうあってほしい」というコンセプトの部分がちゃんと詰められているアイテムだなあと感じました。
そのあたりのカッチリ感は変形ギミックにも生かされています。変形プロセス自体はさほど複雑なものではありませんが、関節の設計がちゃんとしているので変形させていても危なげがなく、また各部の位置を決める上でファジーな部分がほぼないのも好印象。固定するべき部分を固定すれば、ガタつきのないビークルモードができあがります。変形ロボットトイにはノウハウの蓄積が物を言うところがあり、『トランスフォーマー』シリーズのような老舗の完成度に新興メーカーが追いつくのはけっこう難しいところがあるのですが、本作は変形プロセスをある程度単純化することで老舗並みのクオリティに迫ろうとしています。かといって変形プロセスに不満点があるわけでもないし、とてもバランスが取れた内容と言えるのではないでしょうか。
ということで長々と褒め散らかしましたが、実際そのくらいのバリューはあるアイテムだと思います! ロボットトイに興味がある人なら、おそらく買って後悔はしない逸品のはず。ぜひチェックしてみてくださいね!
■ライタープロフィール
ニックネーム:しげる 出身地:日本・岐阜県 自己紹介:フリーライター。ホビー誌などでいろいろな原稿を書く傍ら、毎月けっこうな量のオモチャを買って遊びながら暮らしています
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