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【テレパインタビュー72】「"変形"は人生のテーマである」──超弩級変形ロボットトイ「冥和」のパッケージに込めたこだわりとは イラストレーター・天神英貴氏インタビュー

 ホビーテレパにて予約受付中の変形ロボットトイ、「冥和」。戦艦大和が鎧武者型のロボットに変形するという、何がどうしてそうなったのか一度ちゃんと説明してほしい超弩級ロボットトイです。


(※変形の模様はこちらCMをチェック!)


 この冥和のボックスアートを大迫力に仕上げたのが、イラストレーター・メカデザイナーの天神英貴氏。『超時空要塞マクロス』シリーズの関連商品や各社のプラモデルの箱絵、多数のアニメ作品のデザインワークやイラストレーションなど、現代日本のメカ・ロボットイラストレーションの最前線で活躍するアーティストです。

(イラスト:天神英貴)

 ということで今回は、ボックスアートを担当した天神氏にインタビューを敢行。これまでに数多くの変形ロボットのイラストレーションを手掛けてきた天神氏は、中国からやってきたこの冥和をどう見たのか。そしてボックスアートに込めたこだわりや、日中のサブカルチャーの違いはどこにあるのか。たっぷり語っていただきました。

 

──今回の作画にあたって、実際に冥和で色々と遊んでいただいたと思うんですが……


「作画用にサンプルをお借りしたんで、パッケージ用に色々とポーズを取りました。というのも、僕が担当したパッケージに関していうと、ほとんど自分でレイアウトを作成していまして、メーカーさんやクライアントさんからいただいたレイアウト案は大体無視してしまうんです(笑)。だから、実際に遊んでみるのはとても大事ですね」

──無視してしまう、というのは何か理由があるんでしょうか?


「やっぱり、いただいたレイアウトではなく自分の中から出てきたものでないとテンションが上がらないし、テンションが上がらないといい絵が描けないんです。自分の中で燃えるポーズを把握しようと思うと、やっぱり色々遊ぶ必要があるんですね。それでいうと、ロボット形態の冥和は実によく動きますね! 変形させるとサンプルを壊しちゃいそうだし、僕には無理だろうと思って変形プロセスを追った動画を見たのみですが、可動に関しては驚きました」

──変形に関しても、動画をご覧になっていかがでしょうか? 個人的には割と戦艦大和の形状に引っ張られた工程もあるなと思ったんですが


「ホビーテレパの記事にも書いていらっしゃったように、確かにガワ変形ではあると思います。とはいえ、本当に大和の形状に合わせるだけでは、こういった形にはまとまらないと思うんです。確かにガワ変形ではあるんですが、船底を平らにしてそのままポンと置けるところまで昇華しているのはすごいですよね。あと、船体を真ん中で割るのはわかるんですけど、そこでもう一個砲塔を船内から引き出して数を揃えるとか、もう「何やってんだ……」って言いたくなるようなギミックですよね。ちょっと無理があるところもあると思いますが、でもやっぱりあの大和がここまで変形するというのはかなり衝撃的だよなと。難点を言うと兜が別パーツというところだと思いますが、そこくらいしか指摘する点はないですね」

 


──おっしゃる通りだと思います

「大和が変形して、なおかつ鎧武者になるというのは、本当に常軌を逸してますよね……。面白いし、本当によくチャレンジしたな……と感心しました。あと、今回初めてお仕事をいただいたメーカーさんというのもあって気になっていたのが、戦艦大和に対してリスペクトがあるかどうかだったんです。仕事で大和は何度か描いたことがありますし、宇宙戦艦の方のヤマトも何度も描いているんです。そういった経験を踏まえてもやっぱり戦艦大和というモチーフは日本人にとって聖域というか、汚してほしくないものだと思うので」

──そういったリスペクトという点ではいかがでしたか?


「実際、本当に完成度の高いトイを出してくれているわけで、そこに関して自分としては高く評価しています。他にも、例えば「戦艦形態での長さが46㎝なのは大和の主砲の口径に由来」とか、各部のサイズが実際の大和に由来しているというのはホビーテレパの記事を読んで知りまして、「ええっ!?」と思いました。そんなところ、普通合わせないですよね」

──マニアックなこだわりですよね……


 ロボット形態にしても、それぞれの主砲がちゃんと撃てる位置に移動していたり、あとはちゃんと武者のイメージを忠実に拾っていますよね。背中の旗指物にしても、武者イメージのロボットでも欠けがちなところだと思うんです。でも冥和はそれがあることによって、ちゃんと和風のディテールになっている。驚いたし、正直「なんで日本でこれができなかったんだろう」という悔しさもありますね(笑)。



──「中国から出ちゃったよ……」という驚きと悔しさは自分も感じました


「単なる模倣品とかではなく、愛をもって作っている感じがありますし、実際にこういうものを出されるとぐうの音も出ませんね」

──そういった魅力を感じつつ今回はパッケージのイラストを描いていただいたわけですが、改めて見ても大迫力ですね、これは……

「もしいい加減な内容のオモチャだったら、こういう絵にはなりませんね。やっぱり僕らは大和がとても大きな船だったというのを知っているので、そこは表現したかったんです。あの大きさの船がロボットになったんだったら、もう300mは超えていてほしいですよね。そう考えると絵の視点はやっぱり見上げる感じになるし、背景を背負うという意味でもこういうレイアウトが導き出されるかなと。ちょっと崇拝の対象みたいな感じが出るように、視点にはこだわりました」

──その他にこだわったポイントなどはありますか?


「背景に富士山を背負っているんですが、この富士山のラインとロボットのラインを合わせたところもちょっとこだわったところです。あとは足元の波ですね。浮世絵とかで見られるような、海外の人が感じる「日本の波」っぽさをなるべく再現したかったんです。波の粒子というか、水の粒の大きさってスケール感が出ちゃうんですよね。だからミニチュア特撮でも、雨や波の粒子の大きさでミニチュアっぽさが出ちゃうことがある」

──あ~、それはわかりますね。水滴のサイズには限界がありますから


 だから今回のイラストでは、冥和のスケール感に合わせて波の粒子はなるべく細かく見えるようにしています。手前の波と遠くのロボットみたいな、対物比で大きく見せるというテクニックですね。

──とにかく巨大感の表現にこだわったわけですね


「あと、イラストでは元になったオモチャの形状をあえて無視することがけっこうあって、今回も各部の主砲砲塔のディテールは冥和についているものの形ではなく、実際の大和の主砲砲塔のものに変えています。金型の都合上仕方がない部分ではあるんですが、やはり現実的ではないものはオモチャっぽくなっちゃうので、なるべく描かないようにしているんです。足の横とかも本当はもっとグレーの接合部が見えているんですが、そこは波の下に隠してなるべく見えないようにしています。最初はどうなるかと思ったんですが、最終的には僕も描きながら「かっけえ~!」って思いながら作業できたんで、とても楽しかったです」

──天神さんは、これまでに中国のオモチャのボックスアートなどを手がけたことはあるんでしょうか?


「中国のボックスアートでいえば、今回で3件目くらいですね。他にもアニメなどの仕事での付き合いはあるので、一時期は中国に出張していろんな仕事をしていました」

──日本と中国でお仕事をして、両国のマニアの感覚の違いなどは感じますか?


「基本的に見ているものが同じだから、さほど大きな差を感じたことはありません。ただ明らかに言えるのは、中国人の方が複雑なデザインが好きですね。日中のお寺なんかを見れば一目瞭然ですが、日本人はシンプルなものを美しいと捉える傾向がありますよね。でも、中国のマニアってディテールがごちゃごちゃしたものを好むんです」

──何か具体例ってありますか?


「ガンダムの話になっちゃいますけど、アストレイのレッドフレームですね。あれが典型です。アストレイも描いたことがありますが、「こんなに複雑なものは描いたことないな……」っていうくらい複雑な形をしてますよね」

──確かにアストレイはややこしい形ですね……!


 「こんなに複雑なものが人気あるの?」って人に聞いたら、「アニメ化もされていないのですが、むちゃくちゃ人気あります」と言われて。どこで売れてるかといったら、中国や東南アジアだと。その後実際に現地に行ってみたら、みんなレッドフレームやブルーフレームのプラモを買ってるんですよね。「あ、こっちで売れてたんだ……なるほど……」と思いました。だから、いわゆる初代ガンダムを見ても、シンプルすぎて海外のファンは思ったほどは反応しないんですよね。アストレイくらいみっちりディテールの量がないとメカとしてカッコよくないと。ちょっと話はそれますが、他にも日本と海外ではロボットもののコンテンツに関して感覚に隔たりがあると思います」

──それは具体的にどういった点でしょうか?


 「『マジンガーZ』とかもそうなんですけど、日本だとロボットを作った〇〇博士がまずいて、そういった人たちは往々にしてマッドサイエンティストですよね。そして、パイロットは別にいてそっちがかっこいい主人公だったりする。だからエンジニアのイメージって「マッドサイエンティストの〇〇博士」だと思うんです。しかし、北米の方にエンジニアのイメージを聞くと「エンジニアといえばアイアンマンだろ」って言うんです。向こうではエンジニアがかっこいいものとして捉えられているんですね」

──それは大きな違いですね……


 この日本と海外の差を取り戻すのにどれくらい時間がかかるのか、ちょっとわからないですよね。だから、日本のアニメ界はエンジニアのイメージを少しずつ変えて行った方がいいと思っています。熱血系の主人公というのは熱いですが、根性だけで不景気は乗り越えられませんから(笑)。チートすぎるとはいえ、僕も参加していた『ナイツ&マジック』という作品では主人公がエンジニアであり、パイロットなんです。

──確かに、主人公がエンジニアの作品は新しいですよね


 「『風立ちぬ』とか、ないわけではないんですけどね。とはいえ、日本はステレオタイプが固まり過ぎていて、定型から外れた作品が作りにくい。内需が大きいから日本では作れないようなものにもチャレンジできるという、中国の環境が羨ましい時もありますね。「戦艦大和を鎧武者型のロボットに変形させる」なんてすごくチャレンジングなアイデアだし、そういう意味でも冥和はすごく評価しています」

──そんな冥和のような変形ロボットトイの魅力は、どのあたりにあるとお考えでしょうか?


 「そうですね……。僕は小学生の頃に『超時空要塞マクロス』に出会ったんですが、その時から「形を変える」というものに対して強い魅力を感じていたんです。ひとつの形が同じ体積のまま別な形状に変化するというのは、単にオモチャとしても面白いですが、見るものに与える心理的な影響まで変化しますよね。ちょっと『パトレイバー』っぽい言い回しになっちゃいましたけど(笑)」

──確かに、同じものなのにガラリと見え方が変化するのは、変形トイの最大の面白みですよね


 「そんな「変形」というワード自体が、僕にとっては人生のテーマに近いんです。というのも、僕は変形するオモチャやロボットから、何か問題にぶち当たった時にまず自分自身が変化して柔軟に対処していくという、教訓のようなものを受け取っているんです。また、この間開催された「超時空要塞マクロス展」でも自動変形するマクロスを展示しましたが、変形プロセスが頭でわかっているものでも、実際に自動で変形するところを見ると心が動くんです」

──目の前で形が大きく変化すれば、それはやっぱり驚きになりますよね


「形を変えていくものに対する特別な感情というのは、やはり人間の心のどこかにあると思うんです。だからそれが例えオモチャでもやっぱり魅力的だし、変形のダイナミックさというのは心に響く。この冥和にもそんな驚きが詰まっていますし、それをより多くの人に味わってもらえればと思います」

 

 冥和の面白さ、そして日本と海外のロボット文化やサブカルチャーの差異、そして「変形すること」から受け取れる教訓について語っていただいた天神氏のインタビュー、いかがでしたか? 「変形」の深みを味わっていただけたなら嬉しいです。


天神英貴氏オフィシャルWebサイト


 ということで今回は、冥和のボックスアートに書いていただいた天神氏のサインも特別に1名様にプレゼントいたします! 応募方法については以下の通り、ご応募お待ちしております!!


応募方法:



官製はがきに

「プレゼントの送付先住所」「受取人の氏名」「天神先生サインプレゼント希望」

をご記入の上、こちらの住所までお送りください。


〒164-0001 東京都中野区中野4-10-2 中野CP サウス2F 

㈱ジニヤズ ホビーテレパ プレゼント係


締切は4月末日(当日消印有効)です。







 

商品名:ホビーテレパ「冥和」変形戦艦メカアクションフィギュア

内容物:「冥和」変形戦艦メカアクションフィギュア×1

武将兜×1

刀×1

脇差×1

展示収納兼用台座 ×1

展示用パーツ(戦艦形態用)×2

展示用パーツ(艦神形態用)×2

初回予約特典:主砲射撃エフェクト、必殺技エフェクト

ブランド:ホビーテレパ

商品カテゴリ:塗装済み完成品アクションフィギュア

JAN:4580717640158

発売時期:2023年7月発売予定

素材:PVC&ABS、POM、合金

重量:1.3KG

スケール:ノンスケール

サイズ:艦神形態全高約310mm、戦艦形態全長約460mm、全高約94mm

©Alloy Fleet

 

■ライタープロフィール

ニックネーム:しげる 出身地:日本・岐阜県 自己紹介:フリーライター。ホビー誌などでいろいろな原稿を書く傍ら、毎月けっこうな量のオモチャを買って遊びながら暮らしています











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