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【テレパコラム②】 今業界で注目されている中国のIPライセンス授権マーケット、及び日中知的財産ライセンスビジネスについて(中)

更新日:8月12日

前篇:【テレパコラム①】 今業界で注目されている中国のIPライセンス授権マーケット、及び日中知的財産ライセンスビジネスについて(上)


中国メーカーの日本IPライセンス需要に関する現状分析


では中国メーカーの日本IPライセンス需要を具体的に分析して行きましょう。中国企業にとって、自社商品のIPコラボ案件で最も重要なことは、もちろんそのIP(作品)の中国市場における知名度と影響力です。ここで注目したいのが、中国でのIPライセンスマーケットのトレンドが、日本のマーケットとは結構異なる部分がある、ということです。


例えば『聖闘士星矢』『宇宙の騎士テッカマンブレード』『鎧伝サムライトルーパー』『クレヨンしんちゃん』『ちびまる子ちゃん』は、日本ではかなり昔の作品だったり、或いはメジャーになりすぎて少しオタク的なトレンドからは離れたりしていますが、中国では過去にテレビで放送されたことがあったり、また近年でも繰り返して再放送及びネット放送によって視聴されたりして、今でも広く知られており、中国マーケットにおけるビジネス価値がまだまだ高いのです。

©SOTSU・Tatsunoko Production

©USUI YOSHITO 1992-2021 Licensed by Animation Int'l

©S.P / N.A


ここで注意しなければならないのは、中国市場において、アニメのIPがテレビで広く放送されているかどうかというのは、日本とは全く異なる基準であるということです。例えば、円谷プロダクションの作品である『ウルトラマン』は、中国で広く放送されているため、人気が非常に高いです。一方、同じような特撮作品である『仮面ライダー』シリーズは、中国沿海部の都市で小規模にしか放送されていないため、知名度が日本に比べ認知度が低く、まだまだファン以外では認知度が低い状態にとどまっています。そのため中国メーカーが『仮面ライダー』とのビジネスコラボに名乗りを上げる企業が、日本市場での知名度の割には残念ながら少なかったりします。


もちろん例外もあります。『新世紀エヴァンゲリオン』は、性描写や暴力描写が多いため、中国のテレビでは大規模な放映をされていません。しかし、魅力的な名作という特性から、今でも幅広い年齢層の中国人に高い人気があります。また、二次創作で人気の作品についても、多くの中国人アーティストが同人創作をしているため、中国国内でも広く流通されており、作品に商品的な高い価値を持たせています。特に同人ファンが多いということでは、『初音ミク』や『東方Project』は、中国の若者の間でも高い認知度を誇っており、その典型的な例であると言えます。

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日中IPコラボする際のポイントは? あと日本個人クリエイターにとってのチャンスは?


繰り返しになりますが、ほとんどの場合、中国におけるIPライセンスコラボ案件の成約は、そのIP作品の中国国内における影響力に左右されます。その理由も非常にシンプルで、中国企業は大手であればあるほど安定路線の考えが強く、過去のビジネス実績やネット上で確認できる数字的影響力を見て判断することが一般的です。特に海外の作品とのコラボ案件は、中国企業にとってはライセンス元との長い商品開発と監修の時間、ならびにコストをかけていますので、このようにデータに基づいた慎重な考え方をするのが主流となっています。


しかし、最近では日中IPコラボ案件に例外的なケースも増えてきています。まず、中国には保守的な考えの大手企業以外にも、若者たちが立ち上げたユニコーン企業、新鋭ブランドが数多く誕生しています。彼らは比較的シンプルな内部管理体制、非常に迅速な意思決定、IPコラボライセンスに対してオープンな姿勢、新しいものを積極的に取り入れる態度などを有しております。


こうした企業が、IPライセンス作品や個人クリエイターとコラボ企画をする際の決め手は「代表者(社長や現場責任者)が、特定の作品や作家のファンだからコラボしたい…」というシンプルなものであったりするのです。ちょっとミーハーな「マニア行為」のように聞こえるかもしれませんが、実は中国で若者が主導する新鋭メーカーのコラボ理由として、こういうモチベーションが企画誕生のきっかけになることが非常に多いのです。


また、別のケースもあります。中国新鋭メーカーは、代表や商品開発担当者が日本側の個人クリエイターの作品に対して例えそこまで詳しくなくても、作品ビジュアル表現の斬新さを「感じる」ことができれば、コラボ商品企画成立の可能性が十分にあります。


その理由を説明しますと、中国の若者が主導する新鋭メーカーらは、激しいビジネス競争の中に生き抜くため、ブランドの戦略上に、常に何か「革新的な販売販促方法」を求めているからです。個人クリエイターでもそのニーズに応えられる作品を持っていれば、ビジネスの話に至るケースも珍しくはないのです。

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中国本土の消費財マーケットはまだまだ日本IP作品とクリエイターたちと距離が遠い


日本の多くの企業やクリエイターは「自分のIP作品は優位性があるのだから、待っていれば中国のクライアントの方から積極的に商談を求めてくるだろう」といった考えを持っている方もおられます。ところが目まぐるしく進化するコンテンツビジネスの現在の実情では、その姿勢がもはや正しいとは言えません。


確かにメカ、ロボット、美少女フィギュアなどの分野においては、日本側のIPコンテンツ力が間違いなく世界中でもトップレベルです。したがいまして、この分野では中国側の新鋭企業らが新規商品を企画する時、直接日本側に頭を下げて問い合わせをするケースが多いです。しかしながら、マニアックなホビー市場と比べて遥かに規模が大きい一般消費財分野の市場においては、中国本土の力があるメーカーから、日本側へ直接コラボ企画を提案することは、残念ながら現状は相当少ないと言えます。この点、コンビニ日用品にIPコラボ商品が溢れかえっている日本の事情とは大きく異なります。


なぜなら、中国での一般消費財の大手企業は、年間単位でコラボ案件を考えており、作品選定も世界範囲で考えているからです。事前準備や社内検討の段階で相当に時間をかけております。例えば同業ライバルの他社が日本IP作品を使ったコラボ商品成功事例を確認したら、自社でも日本作品とコラボ商品企画検討を行うかもしれません。しかし、これらのビジネスチャンスは、最終的には長年に渡って中国で活動し、ビジネスネットワークが確立されているディズニーやワーナー、ユニバーサルのようなグローバル企業や、中国現地にIPライセンス窓口を構えている大手の会社に行くことがほとんどです。


もはや世界TOPクラスである中国一般消費財におけるIPライセンス授権という巨大市場に、ビジネス展開を求める日本の企業にとっては、最も価値のある(収益性の高い)ビジネスにありつけるチャンスは、その潜在力に対して残念ながら現状まだ不十分であると言えるのです。

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日中IPライセンスコラボ商品企画における難点についての見解


日本の企業とクリエイターにとって、中国市場におけるIPビジネスは色々な課題がありますが、ここでは、もっとも重要なポイントをいくつか挙げてみます。


第一に、そもそも多くの中国企業は日本のIPライセンス作品や、クリエイターとコラボ商品企画のビジネスプロセスに慣れていません。日本現地に子会社を持つ、一部の有力な国際色が強い中国企業を除いて、一般的な中国の新興企業にとって、IPライセンス分野に精通した国際的なプロフェッショナル人材を社内で確保することは非常に困難です。わからないビジネスに手を出しにくいのは万国共通です。


第二に、中国のローカル市場を中心にビジネス展開する企業、あるいは中国国営企業の場合、中国国内での力が強ければ強いほど、国際的なビジネス知識に乏しい傾向があります。そのため、仮に日中コラボのアイデアがあっても、残念ながら人材面と知識の不足のため実行に至るまでは難しいというケースが多いのです。


さらに日本側の問題点について、筆者の見解を申しますと、日本国内の中小企業においては、日中IPビジネスに精通する多言語能力を持つ国際的な人材が足りていないため、中国市場の潜在的なビジネス可能性があるクライアント企業と効率よくコンタクトを取ることがまずできないです。あるいはそもそも、正確なコンタクト手段がわからないケースが多いのです。


その結果、日本の多くの企業は、中国IPビジネスマーケットにおける客観的な情報入手方法がなく、ビジネスにおけるコミュニケーション力もないため、効率的な経営判断することができないのです。加えて日本の中小企業は経営面において(経済環境の影響もあるだろうと思いますが)ことさらリスク回避的なビジネススタイルが多いと感じています。それも中国IPビジネスチャンスをうまく活用できない要因の一つで、筆者から見るとこれは非常に残念なことです。


現状分析をしてみると、現在日中IPライセンスビジネス分野であえて積極的な姿勢で挑戦している日本企業は、国際的な背景を持っている大手企業か、中国現地で長年を渡って窓口機能の企業を有しているであると言えます。


ここで、日本IP作品をビジネスにうまく取り込んでいる中国企業を比較対象として紹介したいと思います。中国側で日中IPビジネスに最も積極的なのは、日本での留学し、その後IPコンテンツ業界での経験がある中国若者盛大が設立した新鋭企業です。業種も日本のIP作品と親和性が高い「二次元系」ゲームや、ホビーとフィギュアなどの分野に集中しています。彼らは過去の実務経験でそのビジネスのプロセスを理解した上ゆえ成功体験も重ねてきました。特に日中IPビジネスにおいてどれほど膨大な機会と実益が生み出せることを十分に理解しているからです。

©1970-2021 Fujiko Pro Licensed by Animation Int'l


中国現地でビジネスネットワークを確保した欧米ライセンスIP大手は、中国マーケットに懸命に取り組んでいる


前章で述べたとおり、中国市場で長年にわたってさまざまな商品カテゴリーにビジネスネットワークを構築してきた欧米企業大手IPライセンス企業は今でも中国マーケットにどんどん力を入れております。


その代表的な企業として、ディズニーとワーナーブラザースが挙げられます。彼らは中国現地の企業とコラボ商品企画を展開する際には、単に作品の素材やキャラクターの画像を提供するだけでなく、自社リソースを活用し、さまざまな形で中国現地企業とのコラボ商品企画を成功させるようにフォローを行います。


例えば、欧米の大手企業は作品素材のデータベース、キャラクターデザインやアート素材を毎年更新しています。コラボ商品企画を申し出る中国クライアント企業に対して、過去の事例のコラボ企画商品及びパッケージデザイン参考案と、プロモーションにおいて数字的データの提供など、様々なサポートを行っています。また社内にコラボ企画商品に専任担当デザイナーを配属して中国メーカーに商品本体及びパッケージデザイン、宣伝販促面のグラフィックデザイン部分に協力をしています。商品のプロモーションマーケティングの面も、自社メデイア、提携メデイア及び芸能人タレントなどリソースの部分を提供し、コラボ商品企画の利益最大化に懸命に取り組んでいます。


欧米IPライセンス企業の中国マーケットにおいて積極的な「攻め」な態勢と対照的に、日本中小企業が中国企業とのIPコラボ商品案件において、まだ設定や画像素材など参考資料の提供のみにとどまっており、追加的な支援もなかなかできなく、基本「受け」姿勢が多いと筆者は感じております。こういう消極的な姿勢のままでは、成長著しい中国市場における継続的な収益獲得に影響してくるのではないでしょうか。

©DISNEY


中国のIPライセンス授権市場についてもっと詳しく知りたい方に(続編)も準備しています!

続編では、日中IPライセンス業界におかる人材面の現状、及び中国マーケットのビジネスチャンス、注意点をさらに詳しく紹介していきたいと思います。ぜひ楽しみにしてください!

 

■ライタープロフィール

ニックネーム:ライ

出身地:中国


自己紹介:中国美術系大学卒業後日本で長年実務経験後帰国、今は日中IPビジネスと若手クリエイター人材育成に専念。国際大手企業案件から個人クリエイター企画案件まで多数を経験。


1980~1990年代セル画時代の日本ロボットアニメマニアでもある。




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