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【テレパコラム①】 今業界で注目されている中国のIPライセンス授権マーケット、及び日中知的財産ライセンスビジネスについて(上)

「IPライセンス授権コラボ商品」とは? 近年の中国IPライセンス市場について

日本の消費者にとって、例えば「アニメキャラクターのコラボ商品」や「ゲームのコラボ企画」というような、いわゆる「IPライセンス授権ビジネス」は、すでに日常生活の一部としてよく目にするはずです。近年、中国でも新興消費財メーカーや玩具造形メーカーの台頭に伴い、こうした新興メーカーたちによるIPライセンス授権に対する強い需要があり、業界を賑わせています。

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ディズニーやワーナーのような国際的な巨大IPライセンス企業は、すでに長い時間をかけて中国市場に浸透し、様々な消費財メーカーと強いビジネスネットワークを構築してきました。世界的人気のアニメやゲームなど、日本のIPライセンス権利会社も、こうした日中間ライセンス供与案件を通じて中国市場からかなりの収益を獲得しています。


中国のIPライセンス授権市場において商業価値が高い日本のIP作品は?

中国IPライセンス授権市場は主に「玩具」と「日用消費財」の2カテゴリにおいて著しくビジネスが拡大しております。「玩具」のカテゴリーは主にフィギュア、スタチューなど造形商品を指しています。中でも『ドラゴンボール』『NARUTO』『ワンピース』など国際的に有名な作品は、中国でも非常に人気と認知度が高い作品として毎年様々な玩具メーカーが契約し、新商品を発売しています。

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その他に、中国での旬の新作を挙げると『鬼滅の刃』や過去作でも中国では名作として知名度が今でも高い『BLEACH』『宇宙の騎士テッカマンブレード』『聖闘士星矢』など。これらの作品は今でも絶えず中国造形メーカーと新商品を発売しています。


大衆向けの「日用消費財」の分野において人気が高い日本作品を例上げれば、主に『カードキャプターさくら』『ポケットモンスター』『ドラえもん』『クレヨンしんちゃん』『ちびまる子ちゃん』など、年齢層の指定が特にない作品になっています。

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少々オタクよりの作品だと『機動戦士ガンダム』、『新世紀エヴァンゲリオン』や特撮作品の『ウルトラマン』も中国での認知度が非常に人気が高く、毎年様々な業界メーカーとコラボ商品の発売を実現しています。


そのほかに可愛いキャラクターのIPライセンスロールプロバイダーとして有名なサンリオも毎年多くの中国メーカーとコラボ商品を発売しています。

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近年日中IPライセンス市場で、業界経験が豊富なプロフェッショナルたちが、企画案件に積極的に参加したおかげで、中国現地メーカーとの国際IPライセンスビジネスは巨大規模な国際企業に留まるだけではなく、優れた才能と作品を持つ個人のクリエーターでも自身のオリジナル作品を商品化する機会に恵まれてきています。


そして、こういった「新たな日中連携」と言ってもよい個人クリエイターのビジネスは、アニメ作品などの有名なIPに劣らない商業的な実績を上げることもよくあります。日本の有名イラストレーター様と中国のフィギュアメーカーの連携で実現できた個人ライセンスフィギュア商品でも、作品力と商品力が両立できるものであれば、誰もが知っている有名なIP作品よりも実販売数が多いという結果をもたらすことさえ可能となっています。


中国IPの日本メーカーに対するライセンス授権について

ところで、逆に中国IPについては、なじみのない方もいらっしゃるかもしれませんが、実はこちらもかなり市場が拡大してきております。具体的なケースを言えばわかりやすいと思います。特に近年、中国のモバイルゲーム熱から、かなりの数の有名なIP作品を生み出しています。


『アズールレーン』、『アークナイツ』、『崩壊3』、『ドールズフロントライン』などなど。これらのゲームが発売されたとき、彼らは海外市場、特に日本市場を非常に重要視し、知名度が高い日本の声優やイラストレーターを採用しています。有名声優や絵師の起用により、日本でも人気を集められる商業価値の高いIP作品となります。


たとえば、『アズールレーン』は、美少女フィギュアの商品化以外にも日本の消費財メーカーとの共同企画コラボ商品も数多く発売しています。 また日本の多くの一流玩具造形メーカーも、中国の巨大な市場を改めて意識し、中国本土に影響力が高い中国IP作品とコラボ提携して製品を積極的に開発・発売しています。

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第三者情報機関の市場調査フィードバックによると、造形玩具製品の分野で日本の大手玩具メーカーの日本と中国本土での一般企画商品の販売売上高は約1:3であり、日中両方人気が高いIP作品の場合は1 :5または1:10の販売比率になったりします。日本市場の10倍の収益さえ見込めるわけです。この市場の規模と消費力の比較から、日本の玩具メーカーでも新しい製品計画を実行する際に、より国際的な視野から検討するようになっております。


中国のIPライセンス授権において具体的にどんな案件がありますか?

基本的に中国のIPライセンス授権ビジネスは、企画によりかなり自由に展開できることで、特に具体的な制限はありません。現状、中国IPライセンス授権市場においてメインのカテゴリーは造形玩具・一般消費財・女性向けアパレル・ゲーム案件に分けられると言われております。また作品自身の国際マーケティング手法により、中国でIPライセンス授権案件を展開する時は、日本のマーケットと明らかに違う需要が出てきたりもします。


造形玩具のジャンルにおいて、1/7、1/8スケールの美少女フィギュアはもちろん人気が高いですが、男性少年向け熱血戦闘作品は中国側ではフィギュアより大型造形物の彫像スタチューメーカーからの需要が多いと見られます。彫像スタチューとは、大きな特殊効果エフェクトと台座を備えた大型サイズの1/4または1/6スケールスタチュー造形商品で、近年は中国で非常に人気があります。その理由として、日本と異なり大型造形商品のコレクションに熱心な中国の若い裕福層クラスは、比較的広い住宅を持つ事が多く、大型フィギュアも所有が容易であることや、様々な商業施設からもこういった目を引ける大型造形物に需要が高まってきていることなどが挙げられます。ここは日本市場との明確な違いであるところだと言えるでしょう。

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中国では若い女性を中心に絶大な人気を集めている大注目のブランド「POPMART」を始め、コレクション性を強調するブラインドボックス商品企画も、マーケットにおける独特なライセンス需要だと注目されております。


同じ造形カテゴリーに属する、女性向けのBJDドールメーカーとのIPライセンスコラボ案件もこれからは注目に値します。このジャンルはニッチな市場だけど、中国だけではなく世界中で消費力が高く、且つ熱心なファンが多いため、人気作品とのコラボ企画を発表すると、この話題によって高い宣伝効果が得られます。日本のメーカーなら、VOLK社は数多くIPライセンスコラボ商品を出しています。中国BJDドールメーカーはまだ成長途中ですが、一部マーケットをリードするメーカーはすでに実績をあげています。


例えば中国では知名度が高いBJDメーカー「RINGDOLL」は、日本の有名IP作品の『黒執事』とのコラボ商品企画がありました。企画発表当時は日中両方ファンの間で大きな話題を引き起こし、一時ニュースにもなりました。今後はこういった中国BJDメーカーと日本IPのコラボ企画はさらに増えていくだろうと考えられます。

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大衆向けの作品は、中国で幅広くカテゴリーにIPライセンス授権の展開ができています。『ポケットモンスター』、『ドラえもん』、『カードキャプターさくら』等の有名なIPは、毎年多くの中国メーカーにIPライセンス授権をし、食品飲料、衣料品、アパレル、化粧品、生活雑貨など一般消費財から電子製品の携帯電話、電動歯ブラシ、無線ルーターまで、最近は自動車や電気バイクまでコラボ商品が登場しております。

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近年、中国の若い女性たちの消費力が高まる中、女性向けアパレルメーカーも積極的にIPライセンスコラボ商品を企画し、数多くのユニークな商品をリリースしています。大衆向けの女性アパレル商品はもちろん、日本ではニッチな趣味かもしれないですが、中国では若い層をターゲットとする「JKユニフォーム」、「ロリータファッション洋服」と「漢服」のアパレル商品がかなり成熟したマーケットになってきています。このジャンルは元々アニメ・マンガから発展してきたサブカルチャー文化で、IPライセンス作品との親和性が良くて商業的な実績を実現できたIPコラボ企画も多くあります。


実例をあげますと中国ではJKユニフォームブランドとして有名の「梗豆」はサンリオの「シナモロール」「クロミ」、またワーナーの『ハリーポッター』シリーズとIPコラボ商品を企画して市場で大成功を収めました。中国ロリータ最大手の仲夏物語は『カードキャプターさくら』『第五人格』『ピーターラビット』とIPコラボ企画をして業界で目立つほどの販売実績を実現しております。

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ゲーム業界のコラボ案件について、中国のゲーム市場及びゲーム開発メーカーの発展に伴い、中国のモバイルゲーム分野でもIPライセンス授権の事例が多くできています。最近の例をあげますと『中華一番』は上海FunToyGameのモバイルゲーム『食之契約』とコラボを実現し、『原神Impact』で大成功を収めたmihoyoは『崩壊3』で『新世紀エヴァンゲリオン』とのコラボを実現させました。『アークナイツ』はUBISOFTの『レインボーシックス シージ』と2021年中にコラボを実現後、2022年度にCAPCOMとのコラボを発表したばかりです。

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中国で大きな影響力を持つ一部の日本の人気作品は、消費財以外でもユニークな形でIPライセンス授権案件を実現できています。『NARUTO』は中国地元の飲食会社とコラボするの形で、ナルトテーマの日本ラーメンチェーン店をオープンできました。『カードキャプターさくら』は中国でケーキのチェーン店とのコラボ企画で期間限定のテーマ店キャンペーンが実現できています。


今後、中国市場においてIPライセンスビジネスにはまだまだ様々な可能性があり、市場が良い企画を待っている状態だとも言えます。


中国のIPライセンス授権市場についてもっと詳しく知りたい方に続編も準備しています!

続編では、日中IPライセンス案件において中国のメーカーが重視するポイントと、判断する基準について紹介したいと思います。また中国のIPライセンス市場は、日本の個人クリエイター様及び中小創作団体にとってのチャンスと注意すべきところにも説明して行きたいと思います。ぜひ楽しみにしてください!

 

■ライタープロフィール

ニックネーム:ライ

出身地:中国


自己紹介:中国美術系大学卒業後日本で長年実務経験後帰国、今は日中IPビジネスとクリエイター人材育成に専念。国際大手企業案件から個人クリエイター企画案件まで多数を経験。


1980~1990年代セル画時代の日本ロボットアニメマニアでもある。

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